胃ろうのことを考えている。おなかに直接管を通して栄養を送る手術。特別養護老人ホームの常勤医、石飛幸三さん(76)の講演を聞いてからずっと。口から食べられなくなったときの生について。 元血管外科医。東京・世田谷の特養に勤務し、胃ろうの実態を知った。平均90歳の入所者は誤って気管に食べ物が入って肺炎にかかることが多く、搬送先の病院から戻ってくるときは、胃ろうをされていた。理不尽さを感じたのは、父のことがあるから。「倒れたら、余計なことはするな」と言われていたのに、人工呼吸器をつける手術をしてしまった。意識は二度と戻らなかった。それでよかったのかと、自問する。 入所者にひと口でも食べてもらおうとする若い介護士には頭が下がる。食べなきゃ死ぬよ、と。でも、入所者を観察しているとそうでないことが分かる。「食べさせないから死ぬのではない。死ぬから食べないのだ」。終末期の医療は違うと悟る。外科医時代の自分