『天帝のはしたなき果実』の中にはさまざまなネタが含まれています。たとえばミステリ、サブカルチャー、吹奏楽、オペラ、外国語など。読者は吹奏楽をやった経験があれば吹奏楽の描写に記憶を掘り起こされ、Zガンダムが好きであればハマーンさまがどうこういう部分にニヤリとするといえるでしょう。ではこのようなネタを小説中に入れることは知らない読者を排除しているのでしょうか? そうではありません。まず我々にはインターネットという武器があります。知らない言葉が出てきたらググることでその元ネタがなんなのか知り、ひとつ物知りになることが出来ます。それに、作中に登場するネタは多岐にわたっておりそのすべてを網羅することは非常に難しいでしょう。しかしネタがひとつも解らないということもまた考えにくいでしょう。つまり読者はあるネタに対しては共感し、あるネタに対しては疎外感を覚えるという状態になります。だから読者は世界に入り込