2016年のノーベル生理学医学賞の受賞が決まった東京工業大学の大隅良典栄誉教授の研究は、生命の本質に迫る基礎的なものだけに、文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)の支え抜きに進展は難しかっただろう。総額約18億円の支援を受け、細胞内リサイクルであるオートファジー(自食作用)の分野を確立してきた。科研費は全面改革の一環として、大型助成の採択機会の拡大などが挙がる。その方向性と重ねて注目されそうだ。 (編集委員・山本佳世子) 【挑戦的な研究支援】 大隅栄誉教授の最初の科研費採択は1982年度の「一般研究C」。ノーベル賞の契機となったオートファジー観察の88年に先立つもので、課題は「酵母液胞の生理・生化学的研究」だった。「研究の裾野を広く支援するのが科研費の一番の特徴」(文科省研究振興局)だ。 その後、応用向きのテーマなら別の研究助成や産学共同研究に進むが、基礎研究では科研費の他種目にステップ