【ロングレビュー】“戦時下”だって日常は豊かな彩りに包まれる。でも… 『あとかたの街』 おざわゆき BE・LOVEあとかたの街おざわゆきロングレビュー 2014/08/06 『あとかたの街』第1巻 おざわゆき 講談社 (2014年6月13日発売) 前作『凍りの掌 シベリア抑留記』(小池書院)では、作者の父親の体験談(シベリア抑留)をもとに、過酷なシベリア抑留のルポルタージュを描いた作者。本作は、母親の名古屋での空襲体験がベースとなっている。 広島・長崎への原爆投下や東京大空襲は作品の題材として取りあげられる機会も多いが、名古屋大空襲は珍しい。本作で初めてその実情を知った読者も少なくないと思う。 じつは名古屋は終戦までのあいだに合計63回もの空襲を受け、死者7,858名、負傷者10,378名を出し、被害戸数は135,416戸にもおよんだ(総務省「一般戦災ホームページ」より)。名古屋一円は焦土