被疑者死亡で不起訴——。2009年10月26日に発生した「島根女子大生殺人事件」は、7年後、不透明な結末を迎え、真相究明は叶わなかった。なぜ警察の捜査は難航したのか。犯人が死亡した背景には何があったのか。事件発生時から現地取材をつづけるノンフィクションライターの小野一光氏が検証する。(「文藝春秋」2021年5月号より一部を公開) ◆ ◆ ◆ 「島根女子大生殺人事件」を検証 事件当日、島根県立大学1年生のHさん(当時19)の姿は、アルバイト先であるショッピングセンター内のアイスクリーム店にあった。営業を終了した午後9時過ぎの店内には、Hさんと、同じ大学に通うA子さんの姿があった。 「Hさん先に上がっていいよ」 「あっ、ほんと? ありがとう」 私服に着替え、帰り支度をするHさん。 「(店の)ゴミだけ持っていってね」 「わかったあ」とゴミ袋をもち、Hさんは「おつかれ~」と元気のある声で店を後にし
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