手作りの木のケースから活字を選び出す張さん=台北、野嶋写す 右を向いても左を向いても漢字、漢字――。漢字の森にいる気分になる。台北の下町にある印刷会社「日星鋳字行」。活版印刷で使う鉛の活字を製造する台湾で唯一の会社だ。 15世紀に確立された活版印刷技術は情報伝達革命を起こしたが、70年代以降は平板な版で刷るオフセット印刷が主流になり、速度で劣る活版印刷は廃れた。同社も最近は印刷より、特殊な文字の活字を必要とする印刷会社に活字自体を販売する方が収益の主体だ。 同社が製造する活字は明朝、ゴシック、楷書(かいしょ)の3種類。最小2.77ミリから最大14.76ミリまで7種類のサイズで計16万字の活字をそろえる。「繁体字」と呼ばれる伝統的な中国語の活字では世界有数の「品ぞろえ」を誇る。 活字を一つずつ拾って組み上げる作業は職人技そのもの。目の前で刷ってもらうと、同じ字体でもデジタル印刷の整然