印刷 電子を「1個だけ」送るしくみ 半導体の基板上で、電子を1個だけ取り出し、その磁気の向きを維持した状態で別の場所に送ることに、東京大の樽茶(たるちゃ)清悟教授らのチームが成功した。膨大な計算をこなせる「量子コンピューター」の基礎技術につながる可能性がある。世界初の成果で、22日の英科学誌ネイチャー電子版で発表する。 樽茶教授はフランスの研究者らと、半導体の基板に金属で微細な電子の通り道を作った。その一端に電圧をかけ、そこにある電子1個を残してすべて追い出した。次に半導体を振動させて波を起こして、それに電子を乗せて基板の反対側の端に送った。 実験では、電子が持つ磁気の向きが乱れ始める時間の数十分の1の短時間で電子を送れた。電子の磁気の様々な向きで膨大な情報を表現、これを処理して高速計算を実現しようという量子コンピューター構想がある。周りに電子があると、影響を受けて磁気の向きはすぐに