ちょっと考えさせられる話だった。 いや、厳密に言えば、考える前に脊髄反射で反論してしまったのだが、考えてみると引っかかる。 「森下って『彼女欲しいオーラ』が出てないんだよね」 「俺だって出てないだろ。彼女なんか欲しくないし」 「いや、瀧澤は出てるよ。森下は出てないんだよ」 「俺はあれだ、愛のリビドーだ」 「意味はわからんが、お前は出てるんだけど、森下には感じられない」 その榊原が言うには、森下には「彼女が欲しいです」というオーラが見えないという。しかし私だって彼女なんて欲しいなどという気持ちはさらさらなく、私からそんなものが先走って出ていては困る。 しかし、私からは出ているらしい。たしかに、出てるかも。先走ってるかも。 あれは私が十八歳のとき、極力女性と関わらないようにしていた時代だ。 私は、バンドの関係でキーボードの女の子と練習スタジオにいた。二人きりではなく、そのキーボードの子と仲の良