私はとある大富豪のプライベート・シェフをやっている。 背景を少し。私は飲食業界でずっと働いてきた。皿洗い、ウエイターの助手、ウェイター、バーテンダー、そしてキッチンのあらゆるポジションを。ジェームズ・ビアード賞を受賞したレストランでも何年か働いた。 料理に関する学位は何も持っていないが、妙なことに、カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(訳注: 世界で唯一学位の取得ができる料理の専門学校)の学外研修先に指名されたりもした。健康上の理由で、15年前にレストランのキッチンから退いた。 今の雇い主のところで働き始めて、もう12年になる。株式売買で一から財を成した男だ。今は会社を売却し、引退生活を送っている。だが投資の世界ではいまだに尊敬され続けている存在だ。 雇い主の家は、ニューハンプシャー、ペンシルバニア、そしてフロリダに個人で所有している島にある。夏はニューハンプシャー、冬はフロリダ