M山K三郎が赤子時代の怪人アスタカについて語ること(一) 明日原財閥の未来を担う男子として生まれてきた赤子は、その父である二代目明日原総一郎によって「隆(たかし)」と名づけられた。この命名には理由がある。それを簡単に言ってしまうと、赤子が後々の活躍ぶりや才能の発露といった目覚しく活躍する様を用意には期待させない、ごく平凡な生まれ方をしたからである。夫婦には長らく子どもがいなかった。そのために総一郎は普通以上の期待をしていたのだ。私の子であるからには、膨らんだ母親の腹を突き破って生まれてくるような、そんな力強さが欲しい。だが、現実に生まれてきた赤子は……と言う風に。無論、無事に赤子が生まれてきたこと自体は喜ばしいことだった。これはなんとも複雑な気持ちであった。落胆と安堵、それから喜びが同時に彼の胸のなかで蠢くなかで、誕生の瞬間こそ平凡であったが、大きく育って欲しい、という願いを込めて、赤子に