フランスの学歴インフレと格差社会―能力主義という幻想 [著]マリー・ドュリュ=ベラ [掲載]2008年02月24日 [評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学) ■教育の長期化でも残る不平等に警鐘 わが国は、親の階層とは無関係に子供が頑張れば弁護士にも医者にもなれるという意味では平等な社会である。しかし、かつては都立日比谷高校などの公立高校が東大合格者の多くを占めていたが、今は中高一貫教育の私立が上位に並び、東大生の親の年収が全国平均を大きく上回っているという。 欧州でも英国では、私立のパブリックスクールに行くか公立に行くかで将来の進路は大きく分かれる。公立からオックスフォードやケンブリッジへ進学するのは至難の業であり、親の階層が子供の進路に大きく影響している。 これに対して、フランスでは、親の社会階層にかかわらず、子供の教育機会を増やすことで社会的流動性が高まり、平等な社会が実現するという平