副題が示すように、世界の紛争地域へのアメリカ(およびその同盟国)の関与ないし介入が本書のテーマであり、古典的帝国と対比される「軽い」帝国という特徴づけが、著者の視角を物語っている。なお、本書が刊行された二〇〇三年初頭の時点で、イラク戦争そのものはまだ始まっていなかったが、戦争開始は既に必至とみなされており、そのためイラク問題も陰に陽に本書に影を落としている(イラク戦争そのものに著者がどのような態度をとったか――「リベラルなタカ派」としての武力行使支持――は訳者解説で述べられている)。 著者イグナティエフは、世界各地の紛争に関するルポルタージュ風の書物をこれまで三冊書いており、本書はそれらに続く「シリーズ第四作」ということになる。私は以前に、「第三作」たる『ヴァーチャル・ウォー』を中心としてそれ以前の作品にも触れた読書ノート(以下、「前稿」と記す)を書いたが、この「第四作」はそれらとかなりの
一九九九年にコソヴォ問題を名目として行なわれたNATO軍によるセルビア(ユーゴスラヴィア)空爆を主題とした書物である。この事件は、次々と新しい大事件の起きる今日では、ジャーナリスティックな注目から早くも去ろうとしている。だが、その後に起きた米軍によるアフガニスタン攻撃(二〇〇一年)や英米軍によるイラク戦争(二〇〇三年)――あるいはまた、今のところ現実化してはいないが、北朝鮮に対して軍事行動をとれという声も一部にはある――という、冷戦後の一連の「戦争」ないし軍事行動の中に位置づけるなら、今日につながる重要な意味をもつ事件といえる(1)。 著者マイケル・イグナティエフは多面的な人物であり、どういう人なのかを理解するのがなかなか難しい。とりあえず外面的な経歴をいえば、亡命ロシア人貴族――いわゆる「白系ロシア人(2)」――の血を引き、カナダで生まれ、アメリカで教育を受け、イギリスに移住した。ハーヴ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く