母が定年退職したので、慰労もかねて、外国に旅行にいった。 母が行きたいといっていた国だった。 英語の通じない国だった。むろん、母は英語などわからないのだけれど、 英語以外の外国語など、まったくもってわからないようだった。 私はとくべつ語学ができるというわけじゃないけれど、 はじめての異国の街でも、ガイドブックを見ながらであれば、 地下鉄にも乗れるし、店で買い物もできる。おつりが間違っていたら、 抗議をすることもできる。 そういう世代であり、そういう性格なのだと思う。 母は異国の言葉にかなりとまどっていたけれど、 自分でも、あこがれの街で、 ちょっとした体験がしてみたかったんだろう。 買い物がしてみたい、と言い出し、 私からその国のお金を受け取って、少し先にあった店に、飲み物を買いにいった。 あっさり、ひとけた多くお金を取られた。お釣りをもらえなかったのだ。 私はそのことについて、母を必要以