基本的に,前近代の反ユダヤ主義と近代のそれとの間には,連続もあるにせよ,大きな質的転換がみられる。 前近代,特に中世のそれは,キリスト教と相容れない異教徒への迫害として位置づけられる。また,彼らの独自な生活習慣なども排撃の対象となった。ユダヤ教徒の衛生観念のゆえに伝染病への罹患率が低かったことが,彼らが病気の原因であるとのデマを生むこともあった。 だが,近代以降のそれは違う。勿論その構成要素には,「儀式殺人」という中傷のように*1,前近代から連続するものもあったろうが,近代に入り,反ユダヤ主義はふたつの方面で前近代のそれと乖離しはじめる。 ひとつが,人種論の採用である。ゴビノー伯にみられるような人種論は,ナチにおいて典型的に現れたが,「宗教」ではなく「種」を問うものであったがために,それぞれの社会に「同化」*2していたユダヤ人をも狙い撃ちにした(「オルレアンの噂」のような事例もある。フラン