名人4期、碁聖6期、タイトル獲得数35。「最後の無頼派」と呼ばれた囲碁棋士である依田紀基氏の自伝だ。ギャンブルで借金を背負い、家族が離散した「どん底」時代のエピソードまで赤裸々に明かしながら、プロとして勝ち続けるために必要な考え方について語る。勝負師の言葉は全ての職業人に通じる普遍性と重みがあるだろう。 学生時代の著者は絵に描いたような劣等生だった。通知表はオール1。本人いわく、現在も「小学4年で習う漢字は書けない漢字の方が多いと思う。小学4年の算数は多分怪しい」とか。インターネット上では「依田伝説」として、「買い物でおつりの計算ができない」、「自分の家の電気のつけ方がわからない。友人を呼んでつけてもらったことがある」などのエピソードもある。 囲碁や将棋を職業にする者たちはずば抜けた判断力と思考力が求められる。総じて成績優秀な優等生も少なくない。対照的な著者が、棋士に、それも、一流棋士にな