思い切って告白するのだが、私はこの本を泣きながら読んだ。はじめてこの本を読んだとき、書斎で嗚咽した。号泣しそうだったが家族をおどろかせるのをはばかって声を殺して泣いた。なみだが幾度も流れた。 8年後、この文庫の解説をひきうけて、再読した。たまたま九州の都井岬へ行く用があったので、バッグのなかに『今日われ生きてあり』を入れて出かけた。東京から小倉、宮崎を経て串間までの片道13時間の列車のなかで読むつもりだった。 読めなかった。新幹線で読みはじめたのだが、なみだがあふれ、まわりを気にして本を閉じた。 都井岬のホテルで真夜中、目があいた。海に大きな月が上っていた。月に照らされた海を見下ろす窓辺の椅子で、あらためて読みはじめた。 一話ごとに(第十八話「〝特攻〟案内人」だけを例外として)泣いた。深夜のホテルの一室だから遠慮はいらなかった。ときには声をあげた。夜の海に向かって、おうおう吠えた。一話読み
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