ノンフィクション好き、とりわけ未開の地に住む部族の物語などが好きな人にとっては、実に役立つ一冊と言えるだろう。人類学的な思考法を獲得することが、ビジネスにおいて有効な知的ツールになりうるというのだ。 著者のジリアン・テットは、かつてフィナンシャル・タイムズの編集長も務めた人物。学生時代に文化人類学を専攻し、タジク人の婚姻儀礼を観察することで磨いたまなざしを、どのようにビジネスの世界へ転用したのか? そしてそれが多くのビジネスマンにとって重要なのはなぜなのか? 自身のキャリアをベースにした説得力ある筆致で、これらの疑問に答えてくれる。 人類学のマインドセットとして重要なのは「未知なるものを、身近なものにする」という姿勢である。これを実現するためには、見知らぬ部族の中に深く入り込み、他者の考えに耳を傾けなければならない。だがこれを徹底して繰り返すことで他者への共感が生まれるだけでなく、いつしか