午後三時。片手には缶コーヒー。秋。翳りゆく休憩スペース。一人の若手社員と顔を合わせた。眠狂四郎君だ(僕だけがそう呼んでいる)。そのニックネームは業務中の居眠り癖に由来する。あいかわらず居眠り癖は治らないようだが「開眼睡眠」「秒落ち」「病気扱いやめてください」という新技を編み出しながらなんとかサバイブしているらしい。頑張ってほしい。他人事でいられるのは彼が隣の部署の人間だからだ。 「最近どう?」声をかける。「多少、眠っていますけど仕事は楽勝です」という言葉に目まいを覚える。きっつー。僕は眠狂四郎君を「仕事ができる」と評価してきた。それは「任された仕事は過不足なくこなす」という意味であった。彼はそこにプラスアルファ=スゴイ若手という意味を見出したようである。眠狂四郎君は、よくいる物事をそのまま処理することに長けている若者の一人にすぎない。勘違いさせた僕の責任は大きい。 結論から言ってしまうと、