囲碁の頂点を極めた、福岡県出身の棋士加藤正夫(日本棋院理事長)が2004年暮れ、急逝した。享年57。早すぎた死を惜しむ声は、今なお強い。彼が頂点を目指した道程は、日本が、戦後の復興と経済成長を成し遂げていった道に重なる。加藤は“団塊の星”でもあった。「殺し屋」の異名があった棋風とは対照的に温厚そのもの。現役プロとして碁盤に向かいながら、棋院改革に取り組むさなかの死だった。芸道の深奥を求めた加藤のひたむきさ、多くの人々に支えられ、それに応えて輝いた、ひと筋の光芒(こうぼう)をたどってゆく。(文中敬称略)