つぶらな瞳で魚を見つめ、獲物をくわえて悠々と歩み去る。早朝の漁港、ファインダー越しの姿がほほえましい。 宮城県石巻市の田代島は、同市中心部の南東約15キロ、石巻湾に浮かぶ面積3・14平方キロの島。人口70人ほど。一方、島に暮らすネコは約100匹にのぼる。 島の中心部に「猫神様」を奉る「猫神社」がある。由来では、漁師が石を砕いて錨(いかり)を作っていると、破片がネコにあたり傷を負わせてしまった。そこで、ネコの安全と大漁を祈願して建立されたという。 「ネコは、昔からいじめないんだ」。そう話すのは、江戸時代から続く定置網漁「大謀(だいぼう)網」で、漁を統括する「大謀」を務める山道正義さん(58)。「悪さをしないし、かわいい」 大漁を約束する神様として大切にされ、離島という地理的条件も一役買って島は“ネコの楽園”となった。 猫神社への細い坂道の途中、ネコの群がる民家があった。「ガンガン」。壁をたた