休戦 二〇〇八年三月一九日の午後。最終のユーザーテスト中に発覚したシステムトラブルへの対応を、もう一人の副社長である野上と議論していた。 事務の安定性を考えて、今のうちにシステムを抜本的に修正しておくべきと主張する野上。開業が二ヶ月後に迫ったこの局面では、システムに手を入れるのは極力避けるべきで、業務側の事務フローを変更することで対応すべき、と主張する僕。議論は平行線を辿っていた。 そのとき、デスクの電話が鳴った。電話の主は、人事担当と社長秘書を務める、川越。 「川越さん?会議、三時からですよね。ちょっといま、取り込み中なんですけど・・・」 「社長がお話したいと言っています」 「出口さん?あとじゃぁ、だめですか」 「野上さんと二人で、至急、とのことです」 野上とはいったん「休戦」をして、オフィスの入り口付近に位置する出口の部屋に、二人で向かった。 社長室に急いで足を運ぶと、緊張した顔で出口
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