2023年7月23日のブックマーク (2件)

  • 絶対王者ができるまで

    二月も後半に差し掛かった頃、夜の「大森ボクシングジム」では、友永と二宮が久々のマスボクシングを行っていた。三枝はエプロンサイドでマットに両手を突き、厳しい目でふたりの動きを注視していた。 「ホラ祐次! もっと足動かせ!」 リング内では専ら二宮が得意のフリッカージャブを連打しながらサークリングし、友永が左右のフックを出しつつ追う展開だった。三枝の横から、井端も声をかける。 「ニノさん! ジャブ走ってますよ!」 二宮は時折笑顔を浮かべながら、左手一で友永をコントロールにかかった。 「ラスト一分!」 三枝が号令すると、二宮のテンポが更に上がった。ステップも速くなり、時々シャッフルが入る様になった。一方の友永はウィービングしつつ距離を詰めようと試みるが、二宮のジャブの壁を破れずにいた。 「ラスト三十!」 また三枝が大声で告げる。すると、それまで遮二無二前進していた友永が、急に足を止めて一歩バック

    絶対王者ができるまで
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/07/23
    前回からかなり日数経ってるけど気にするな。
  • 鳳凰落とし #22|松田悠士郎

    調布へ先回りした嶋野は、クラウンを早月のマンションの近くへ路上駐車すると、ジャケットの内ポケットに押し込んでいたチェーンカッターを助手席に放り、腰に挟んでいたガバメントをダッシュボードにしまい、ハザードランプを点灯させたまま降りた。小走りに付近のコンビニエンスストアに入ってトイレを借用し、軽と缶コーヒーを買い込んで戻った。レジ袋をチェーンカッターの上に置いて衆目から隠し、運転席側の窓を少し開けておき、外に注意をしながら事を始めた。 ものの数分で事を終え、缶コーヒーを啜っていた嶋野の視界に、早月の姿が入った。嶋野は缶コーヒーをダッシュボードの上に置いてシートの背もたれと共に上半身を倒し、首を僅かに上げて早月の様子を伺った。相変わらず俯き加減で歩く早月を観察している内に、嶋野の中に言い様の無い情動がこみ上げた。銀縁眼鏡の裏に隠れた泣きボクロが、嶋野の目には何故かくっきりと見えた。 ひ・と

    鳳凰落とし #22|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/07/23
    嶋野が律儀に他の荷物を届けているのは、アシがつかない様にする為。