「え〜、勘弁してくださいよ〜」 ワタシは眉毛を八の字にして懇願こんがんするピンク男を振り払って後部座席を出ると、駐車料金を精算してバンデン・プラをコインパーキングから出した。 「ホラ、案内して」 ワタシが片手で煙草を出しながらバックミラー越しに指示すると、森崎は溜息を吐いて身を乗り出し、蚊かの鳴く様な声で道案内を始めた。 三十分近く走って辿たどり着いたのは、高級住宅街として知られる地域だった。 「オタク、こんな良い所住んでんの?」 ワタシが横目で森崎を見て訊くと、森崎は気色悪い笑顔で答えた。 「え、いや〜それ程でも〜」 ワタシは苛立いらだちを覚えつつ、不動産屋ってのはそんなに稼かせげるもんなのか? と疑問ぎもんに思った。まさかコイツ、地上げとかやってねぇだろうな? そうこうする内に到着したのは、さほど新しくもなさそうな五階建てのマンションだった。建物の横には駐車場が広がっているものの、区画
![「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#11|松田悠士郎](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/53fb8d034a043e0565cb43347d398a2243f76992/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F142706736%2Frectangle_large_type_2_9421a088bc1f26529faa85fab8d18c4d.png%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)