今年(2023年)の、第十四回小説 野性時代新人賞は、大賞が該当作なし、奨励賞受賞作として関かおるの「隣も青し」が選ばれた。同賞は昨年の第十三回も大賞が該当作なしであり、奨励賞受賞作として入江直海の「性の隣の夏」が選ばれている。二年続けて大賞なしとは珍しいことだ。また昨年は、鮎川哲也賞が受賞作なし、横溝正史ミステリ&ホラー大賞も大賞受賞作なしという結果であった。それぞれ、優秀賞・読者賞が選ばれ、作品が出版されているが、いささか寂しい状況である。だがこれは、近年の新人賞事情を反映したものといえるかもしれない。 私は二十年以上にわたり、幾つかの新人賞の下読みを担当している。あくまでも個人的な感想になるが、その経験を踏まえていうならば、ここ十年の新人賞の全体的なレベルは上がっている。昔は、己の妄想をそのまま原稿にぶつけたような、小説になっていない応募作があった。しかし現在、そのような応募作は、滅
![小説の新人賞、なぜ「受賞作なし」相次ぐ? 作家デビューへの道はどう変化したか](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/4275ef4a598409d3bd3b1cd887dd3842eff42e11/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Frealsound.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2023%2F03%2F20230323-shinzin.jpg)