■ドキュメンタリー性への着目 中山千夏。この名を聞いて懐かしさを覚える方も多いはずだ。60年代末から70年代、彼女はテレビタレントとして絶大な人気を誇った。元々子役から出発した俳優であったが、ワイドショーの司会で注目され、さらには歌手としても自ら作詞した「あなたの心に」が大ヒットするなどマルチに活躍した。 ところが彼女は、ある時からテレビタレントとしての自分に疑問を抱くようになっていく。『芸能人の帽子』は、作家となった現在の中山千夏が自分について書かれた当時の芸能記事を読み返しながら、タレント中山千夏がいかにしてテレビから身を引こうと考えるに至ったかを解き明かすという、ユニークな一冊である。語り口も軽妙で、当事者による芸能史、女性タレント論として出色の面白さだ。 だがそれだけではない。本書の根底には「テレビとは何か」という問いがある。その答えを中山千夏は、自身も出演したドラマ「お荷物小荷物