「馬鹿ね、そんなくだらない理由で人を殺したの」 母は呆れたようにテレビに向かってそう言った。 ちょうどお昼のニュースの時間帯の話だ。 テレビには、21歳の大学生の男が護送車で運ばれていく姿が映し出されていた。 無機質な白い文字が画面を淡々と流れていく。 女子高生が殺傷されたこと。 人を殺せば刑務所に入って人生をリセット出来ると思ったこと。 小学生から大学生の今まで、自分は何をやっても駄目だと感じていたこと。 そのことを考えると夜も眠れず苦しかったこと。 私は母のように笑うことが出来なかった。 そうだね、くだらないね。 そんなこと言えるはずなかった。 なぜなら私もその大学生と 同じような気持ちを確かに抱えていたからだ。 「私、この人の気持わかるなあ…」 私の口をポツリとついて出た言葉に母がギョッとしたのが視界の片隅に映った。 探るように、信じられないものを見るように私をジッと見ていたように思
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