科学とは何か,科学の報道はどうあるべきかについて,5人の論者がそれぞれの視点と立場から解き明かしていく良書だ。個人的には非常に満足できた本だが,5人の書き手のスタンスの違いから,5つの章の論調と立脚点は微妙に(?)違っている。個人的に非常に面白かったのは「第1章 科学と科学ではないもの」,「第3章 報道はどのように科学をゆがめるのか」,そして「付録 放射性物質をめぐるあやしい情報と不安につけ込む人たち」の3つである。様々な問題を膨大な証拠と批判精神から一刀両断していく様は圧倒的で爽快そのものだ。逆に「第2章 科学の拡大と科学哲学の使い道」と「第4章 3.11以降の科学技術コミュニケーションの課題」は私個人の趣味には合わなかった。科学的な議論としてはちょっと行儀が良すぎた感じである。 まず第1章。冒頭から面白いぞ。ここではまず1枚のグラフが提示される。縦軸は日本の女性の平均寿命,折れ線グラフ