資本が無軌道に人びとを苛む一方で、国家が国境の壁をせり上げている。押し出された者は、当て所もなく荒野を彷徨うのみ。私たちの居場所はいま、どこにあるのか――。開高健ノンフィクション賞受賞作家が、未曾有の規模で崩落する21世紀の「人間」を描出する。 第4回 「雑民」たちの浄化 気がつくと「雑民」たちの姿は消えて、代わりにLGBTという衣をまとった「市民」たちが跋扈していた。 LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を組み合わせた性的少数者を指す略称だという。近ごろ、メディアのあちこちで見かける。 でも「だという」としか、私には言いようがない。自分もその対象(トランスジェンダー)に当たるのだろうが、しっくりこない。むしろ、窮屈さの方が先に立つ。 違和感を持て余していると、ふと雑民という言葉を思い出した。この方が落ち着く。ゲイ雑誌を主宰し、テレビの政見放送で物
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