ある日を境に、女性に強力な電撃を放つ力が宿ち、それまで支配されてきた女たちが男たちを支配する社会が生まれた──! と、設定だけ聞くと無茶苦茶な小説がナオミ・オルダーマンによる本書『パワー』である。女性作家に与えられるベイリーズ賞を受賞し、エマ・ワトソンが自身のフェミニストブッククラブの推薦図書に選ぶなど、フェミニスト的な観点の評価があるのは当然だが、新たな新秩序が乱立し終末的状況へと向かっていくディストピア小説、SF作品としてなかなかおもしろい。 まあ、会話文も描写も、複数人を主人公として進んでいく構成も冗長でウンザリさせられたのはちと残念だが、男性が自身が道を一人で歩いていて、レイプされた後に殺されてしまうような事態を心配しなくてはならない状況など、いろいろな形で「これまで男性が女性にしてきたことが、電撃の力を持った女性によってやり返されていく」展開に、ぞっとさせられながらも惹きつけられ