ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (19)

  • データ化すれば客観的に評価できるという考えの落とし穴──『測りすぎ──なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』 - 基本読書

    測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 作者: ジェリー・Z・ミュラー,松裕出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/04/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る僕の業はWebプログラマで、こうした職業としてはありがちなこととして何社も転々としながら(時にフリーで)仕事をしているのだが、極少人数の企業をのぞけばだいたい「どうやって社員の成果を評価するか」といったところで試行錯誤している。 メンター的な存在が評価するようなケースもあれば、成果をできるだけ定量的・客観的に評価しようとするところもありと様々だが、やはりIT界隈ということもあり後者の機運の方が高い。より納得感のある評価制度があれば会社側も勤めている側もウィンウィンなので、定量的・客観的な評価が「当に」できるのであればそれは良いことなのだけれども、あんまり「こりゃうまくいっている!」というところは

    データ化すれば客観的に評価できるという考えの落とし穴──『測りすぎ──なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』 - 基本読書
    JohnRTylor
    JohnRTylor 2019/05/18
    会社の目標管理なんかはまさにそれで、社員に目標値達成させようとして、それを追うが故に本来の目的からそれていくことが往々にしてある。数値を測るにしても、本来の目的と関連のある数値でなければ意味がない。
  • 「思い通りにいかないこと」を前提として考える──『悲観する力』 - 基本読書

    悲観する力 (幻冬舎新書) 作者: 森博嗣出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2019/01/30メディア: 新書この商品を含むブログを見る「悲観」についてのである。著者は作家の森博嗣氏。この書名を見た時、「ああ、これは(森氏が書くのに)ぴったりだなあ」と思ったが、それは氏がいつも不測の事態に備えて締切の半年前には原稿を上げるような人で、もう何年も前から「自分がいつか死ぬし、それは近日中の可能性もある」ということを常に意識し、書かれてきた「悲観的な」人であるからだ。実際、これだけ悲観的な人はなかなかいないだろう。 世間一般的に重要だと思われているのは、悲観よりかは楽観の方だと思う。未来は明るく、自分の前途には素晴らしい世界が待ち受けている、自分が今からやろうとしていることはきっとうまくいくだろうと完全に楽観的に考え、行動することができればそれは素晴らしいことなのかもしれない。受験生の前で

    「思い通りにいかないこと」を前提として考える──『悲観する力』 - 基本読書
  • 宇宙文明が遭遇すると想定される、普遍的な危機への考察──『地球外生命と人類の未来 ―人新世の宇宙生物学―』 - 基本読書

    地球外生命と人類の未来 ―人新世の宇宙生物学― 作者: アダム・フランク,高橋洋出版社/メーカー: 青土社発売日: 2019/01/25メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るこの広い宇宙に、文明を発達させた生物の住まう惑星はいくつあるのだろうか。実測しているか否かでいえば現状は間違いなくゼロだが、だからといって宇宙のすべてを観測したわけではないのだから、何十、何千、何兆といった文明が他に存在していたっておかしくはない。実際、それは物凄くワクワクさせられる問いかけであると同時に、我々の行末を考えるにあたっても重要な問いかけであるから、様々な仮説が立てられ、計測が行われてきた。書も、そんな流れの中に組み入れられる一冊である。 人新世の宇宙生物学は、革新的な見方をもたらすだろう。地球外生命体(や地球外文明)の存在を真剣に考えるときが来た。最近の数十年間で起こった宇宙生物学

    宇宙文明が遭遇すると想定される、普遍的な危機への考察──『地球外生命と人類の未来 ―人新世の宇宙生物学―』 - 基本読書
  • アイデンティティが問われ続ける極上のチェンジリング・ファンタジィ──『カッコーの歌』 - 基本読書

    カッコーの歌 作者: フランシス・ハーディング,児玉敦子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/01/21メディア: 単行この商品を含むブログを見る嘘をつけばつくほど、真実を宿した大きな実をつけるという「嘘の木」をめぐる傑作歴史ミステリ『嘘の木』の著者フランシス・ハーディングの最新邦訳がこの『カッコーの歌』である。いやー、期待していたけど今回もめちゃくちゃおもしろい! 書名にカッコーと入っているように、問題を抱えながらも平穏に暮らしていた一家の元へ、取り替え子的にやってきてしまった一人の少女=人形の物語である。読み進めるたびに自分はいったい誰なのかとアイデンティティが問われ、新たな名前を、人生を得るために奮闘していく。それを取り巻く文体と超常現象の数々はページをめくる手が止まるほど美しく、描写に耽溺させてくれる極上のファンタジィだ。 舞台とか 舞台は1920年、依然として戦争

    アイデンティティが問われ続ける極上のチェンジリング・ファンタジィ──『カッコーの歌』 - 基本読書
  • いつ、どこで、誰が酒を飲んでいたか──『酔っぱらいの歴史』 - 基本読書

    酔っぱらいの歴史 作者: マーク・フォーサイズ,篠儀直子出版社/メーカー: 青土社発売日: 2018/12/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るアルコール歴史や人間に作用する化学とは……みたいなは僕もこれまで何冊か読んでいたが、書はそれらとは少し路線が異なっており、”酔っぱらい”についての歴史書である。酔っぱらいの歴史はもちろん皆さん知っての通り現在進行系のものだが、はたしてその起源はどこにあるのか。人間は、どのようにして酔っ払い続けてきたのだろうか。まあそんなような問いかけを、シュメールのバー、古代エジプト、ギリシャの饗宴、古代中国、イスラム、ヴァイキング、アステカ、オーストラリア、ロシア──などなど、時代的にも地理的にも拡張していったのが書である。 歴史書は、誰それが酒飲みだったという話は好んで語るが、飲酒の詳細は説明してくれない。どこで飲んでいたの

    いつ、どこで、誰が酒を飲んでいたか──『酔っぱらいの歴史』 - 基本読書
  • 脚本家にとってのバイブル──『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』 - 基本読書

    ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基と原則 作者: ロバート・マッキー,堺三保,越前敏弥出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2018/12/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る世界的に有名な脚講師であるロバート・マッキーの代表作がこの『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基と原則』であるようだ。ハリウッドなどでもとりあえず読んでけとしてバイブルのように扱われているようで、書の解説も最近オリジナルな短編SF映画制作資金としてクラウドファンディングで2000万以上を集め、米国に渡って準備していた堺三保さんが担当している。僕も、この翻訳版が出る前から編集者など、複数人が書について語っているのをみていたので、ようやく読めるようになってとても嬉しい(原書は1997年だから、20年以上経ってる)。 で、肝心の内容だけれども、”バイブル”と言われるにふさ

    脚本家にとってのバイブル──『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』 - 基本読書
    JohnRTylor
    JohnRTylor 2018/12/30
    「みんなと同じ事はしたくない」 という、みんなと同じセリフ。というだいたひかるのネタを思い出した。
  • うまく死ぬには現代は複雑すぎる──『現代の死に方: 医療の最前線から』 - 基本読書

    現代の死に方: 医療の最前線から 作者: シェイマス・オウマハニー,小林政子出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2018/10/19メディア: 単行この商品を含むブログを見る病気をしているわけではないのだけれども、最近死について考えることが増えた。はたして、自分は余命宣告されて、それを受け入れられるだろうか。治療方針や、諦めどころなど、難しい決断を迫られて対処できるだろうか。何もできず生きながらえるだけは嫌だと思うが、死を前にしてそれが自分に選択できるか、などなど。 死は一つだが死に至るルートは複数あり、自分はまだ死んだ経験はないので、備えようと思っても難しいものがある──と、そんなことを考えているうちに刊行されたのが、シェイマス・オウマハニー『現代の死に方』だ。アイルランドで医者として日々患者らと接し、数多くの死をみてきた著者による死に方についてのエッセイであり、哲学者から有名人、

    うまく死ぬには現代は複雑すぎる──『現代の死に方: 医療の最前線から』 - 基本読書
  • 異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』 - 基本読書

    タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者: ピーター・ゴドフリー=スミス,夏目大出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2018/11/17メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見るタコというのはなかなかに賢い生き物で、その賢さを示すエピソードには事欠かない。たとえばタコは人間に囚われている時はその状況をよく理解しており、逃げようとするのだが、そのタイミングは必ず人間が見ていない時であるとか。人間を見ると好奇心を持って近づいてくる。海に落ちている貝殻などを道具のように使って身を守る。人間の個体をちゃんと識別して、嫌いなやつには水を吹きかけるなど、個タコごとの好き嫌いがある。瓶の蓋を開けて、中の餌を取り出すことができるなどなど。 タコには5億個ものニューロンがあり(これは犬に近い。人間は1000億個)、脳ではなく腕に3分の2が集まっている。犬と同じニューロンってことは

    異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』 - 基本読書
  • マジのアメリカ合衆国元大統領が書いたサイバー・サスペンス──『大統領失踪』 - 基本読書

    大統領失踪 上巻 作者: ビルクリントン,ジェイムズパタースン,越前敏弥,久野郁子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/12/05メディア: 単行この商品を含むブログを見る大統領失踪 下巻 作者: ビルクリントン,ジェイムズパタースン,越前敏弥,久野郁子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/12/05メディア: 単行この商品を含むブログを見るビル・クリントンといえばアメリカ合衆国元大統領だが、そんな彼がベストセラー作家のジェイムズ・パタースンと組んで、エンタメ、それもガチのアメリカ合衆国大統領を主人公に書いたエンタメ小説がこの『大統領失踪』だ。その書名の通りに(原題:the president is missing)大統領が失踪しちゃう話なのだが、それは米国を悪夢的なサイバー攻撃から守ることと関連していて──と、側近の部下すらも信用できない状況下で英雄的な活動をする

    マジのアメリカ合衆国元大統領が書いたサイバー・サスペンス──『大統領失踪』 - 基本読書
  • 脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書

    神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源 作者: E.フラー・トリー,寺町朋子出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2018/09/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る神は脳がつくったとはいうが、だいたいの感情や概念は脳が作っとるじゃろと思いながら読み始めたのだが、原題は『EVOLVING BRAINS, EMERGING GODS』。ようは「具体的に脳が進化していく過程でどの機能が追加された時に、神が出現したのか?」という、人間の認知能力の発展と脳の解剖学的機能のを追うサイエンスノンフィクションだった。神は主題ではあるが、取り扱われるのはそれだけではない。 認知能力が増大した5つの変化 書では主に、認知能力が増大した5つの重要な段階を中心に取り上げていくことになるが、最初に語られるのはヒト属のホモ・ハビリスである。彼らは230万年前から1

    脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書
  • 人間に子供が産まれなくなった未来を描き出す、森博嗣によるSFシリーズ、ついに完結!──Wシリーズ - 基本読書

    人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ) 作者:森 博嗣発売日: 2018/10/24メディア: 文庫森博嗣による、人間による子供がほとんど生まれなくなり、人工知能などの電子知性が人間を遥かに上回る能力を発揮しはじめたばかりの状況を研究者の視点で描き出すWシリーズが先日出た第十作目『人間のように泣いたのか?』でついに完結。 この記事では完結ということでざっくりシリーズへの総評的なものをして置こうと思うが、まずなにをおいても素晴らしいSF作品であったというところは最初に書いておきたいところだ。特に、高度な人工知能、ロボットが当たり前に存在し、人々の寿命が飛躍的に世界はどのような社会をとるのか──意思決定、政治の在り方・戦争、研究手法などなど──といった描写は、10作ものシリーズ物であるから世界各地の細かい部分まで含めて描かれ、議論されており素晴らし

    人間に子供が産まれなくなった未来を描き出す、森博嗣によるSFシリーズ、ついに完結!──Wシリーズ - 基本読書
  • 絶滅は本当によくないことなのか?──『絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ』 - 基本読書

    絶滅できない動物たち――自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ 作者: M・R・オコナー出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2018/09/27メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る人間の活動やそれに伴う気候変動によって物凄い数の生物が絶滅しており問題だ問題だ、なんとか動物たちを絶滅から救わねば──というのは一般的な論調であるが、実際のところ当に絶滅はよくないことなのだろうか。もちろんよい、わるいというのは誰の視点でみるかによってかわってくるものであって、たとえば地球の視点に立っていえば、あらゆる生物が死滅しようが関係ないしどうでもいいことだろう。 一方、人間的観点からいうと、絶滅はよくないことだろう。特に我々のせいで絶滅されたとあっちゃあ気まずいし申し訳ない。現在、1年間に約4万種もの生物がこの地球上から姿を消しているというし、そんなに絶滅したとなるといろ

    絶滅は本当によくないことなのか?──『絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ』 - 基本読書
  • 世界中の女に電撃を放つ力が宿ち、女が男を支配するようになった世界──『パワー』 - 基本読書

    ある日を境に、女性に強力な電撃を放つ力が宿ち、それまで支配されてきた女たちが男たちを支配する社会が生まれた──! と、設定だけ聞くと無茶苦茶な小説がナオミ・オルダーマンによる書『パワー』である。女性作家に与えられるベイリーズ賞を受賞し、エマ・ワトソンが自身のフェミニストブッククラブの推薦図書に選ぶなど、フェミニスト的な観点の評価があるのは当然だが、新たな新秩序が乱立し終末的状況へと向かっていくディストピア小説、SF作品としてなかなかおもしろい。 まあ、会話文も描写も、複数人を主人公として進んでいく構成も冗長でウンザリさせられたのはちと残念だが、男性が自身が道を一人で歩いていて、レイプされた後に殺されてしまうような事態を心配しなくてはならない状況など、いろいろな形で「これまで男性が女性にしてきたことが、電撃の力を持った女性によってやり返されていく」展開に、ぞっとさせられながらも惹きつけられ

    世界中の女に電撃を放つ力が宿ち、女が男を支配するようになった世界──『パワー』 - 基本読書
  • ゆりかごから宇宙へ『もしも宇宙に行くのなら──人間の未来のための思考実験』 - 基本読書

    もしも宇宙に行くのなら――人間の未来のための思考実験 作者: 〓島(ぬでしま)次郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/10/05メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る人間はもう宇宙に行っているが、書が扱うのはそのもっと先の話。月も火星も超えてもっと先へ。もっと広い場所へ「人類」が進出していく際に、そこで何が起こるのか。何を考慮する必要があるのか。どんな問題が起こり得るのか。そういった、人類が宇宙へ進出した未来のための思考実験をやってみましょうやというである。 僕はSFが大好きなので、この手の思考実験は大好物である。類書としては宇宙における軍事問題、スペースデブリの処理、宇宙滞在者の健康管理問題や、人間はどのような理由でなら宇宙植民を行うだろうか? などなどの考察を行う稲葉振一郎『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』もあるが(

    ゆりかごから宇宙へ『もしも宇宙に行くのなら──人間の未来のための思考実験』 - 基本読書
  • 失われた技術を復元する──『ジャイロモノレール』 - 基本読書

    書はジャイロモノレールについての概説書である。 ジャイロモノレールとはレールが一の鉄道の名称である「モノレール」にジャイロスコープを利用し、無支持で走行できる安定性を付与したものになるが、この技術は20世紀のはじめ頃(1900〜1910年)に開発され、その後大戦に突入したことで開発は中断。そのまま、それを成立させる技術も失われてしまっていた。 もともとモノレールが1レールで移動できるので、鉄道と比べれば2倍の輸送効率となり、ジャイロモノレールは既存の鉄道レールの上に乗っかってバランスをとることもできれば、それ以外の場所でもレールを一置くだけで走行できるなど、敷設費が安くおさえられる利点がある。ジャイロスコープを用いた車体の構築など、体費用は多額という難点もあり、一長一短ではあるものの、使い所はあるとみられていた。だが、一度開発が中断した後、再度この技術を再現しようとする人は長らく現

    失われた技術を復元する──『ジャイロモノレール』 - 基本読書
  • 〈水なし洪水〉が押し寄せた人類の終末を描く──『洪水の年』 - 基本読書

    洪水の年(上) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行この商品を含むブログを見る洪水の年(下) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行この商品を含むブログを見る『侍女の物語』のマーガレット・アトウッドの最新邦訳である。作品としては〈マッドアダムの物語〉三部作の『オリクスとクレイク』に続く第二部目だが、世界観と一部登場人物が共通しているが話としては独立しているのでここから読み始めてぜんぜんOK。〈水なし洪水〉と呼ばれる何らかの感染症によって人類の多くが亡くなってしまった後の世界をタフでハードに生き抜いていく、二人の女性の物語だ。 詩的でリズミカルな文体は驚異的に読みやすいうえに癖になり、二人の女性が、この滅亡一歩手前の世界がこの先

    〈水なし洪水〉が押し寄せた人類の終末を描く──『洪水の年』 - 基本読書
  • ドーピングはいかに人体に作用するのか──『走る、泳ぐ、ダマす アスリートがハマるドーピングの知られざる科学』 - 基本読書

    走る、泳ぐ、ダマす アスリートがハマるドーピングの知られざる科学 作者: クリス・クーパー,西勝英出版社/メーカー: 金芳堂発売日: 2018/09/07メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るアスリートのドーピング使用が発覚してメダルが剥奪されるのはそう珍しいことではない。僕個人としては最近、そうしたニュースをみても、「アスリートにとっちゃ成績を出さないと死活問題だし、やるやつもいるよな」ぐらいにしか思わなくなっているが実際問題ドーピングはどのように人体に作用しているのだろうか。何をどうしたら走るのが早くなるのだろうか。だいたい、それは当に効果があるのだろうか。 どれぐらいの数の人間がやっていて、どのようにして検査しているのか。ドーピングを使用して身体を強化するのと、生まれつき遺伝子が異常に特定の身体機能を強化していた場合、それはズルなのか。なぜ人はドーピング者をズ

    ドーピングはいかに人体に作用するのか──『走る、泳ぐ、ダマす アスリートがハマるドーピングの知られざる科学』 - 基本読書
  • SFファン交流会向けに作った冬木糸一の文学リスト - 基本読書

    先週の土曜日、SFファン交流会で文学について牧さんと西崎さんと語る機会がありまして、事前に質問に答えて作ってきたリストが下記になります。特に縛りはありませんでしたが、いちおうSFファン交流会ということでどれもSFっぽい要素のある作品を選んだ感じ。そのため、僕のオールタイム・ベスト文学というわけではない。 会では、三人それぞれまったく作品がかぶることもなく、好みがはっきり出ていておもしろかった。以下、簡単に紹介でも。 特に話題にしたい、名作という作品を10作品。 われらが歌う時 上 作者: リチャード・パワーズ,高吉一郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07/30メディア: 単行購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (65件) を見るリチャード・パワーズの中でも最も好きな作品。三代にまたがる家族の物語。ユダヤ人、黒人女性の夫婦がまだまだ人種差別の激しい1930年

    SFファン交流会向けに作った冬木糸一の文学リスト - 基本読書
  • 毎朝目が覚めると別の人間になっている──『エヴリデイ』 -基本読書

    エヴリデイ (Sunnyside Books) 作者: デイヴィッドレヴィサン,David Levithan,三辺律子出版社/メーカー: 小峰書店発売日: 2018/09/10メディア: 単行この商品を含むブログを見る毎朝目が覚めた時、別の人間に乗り移るとしたら、その人物はいったいどのような人生を送るだろうか──デイヴィッド・レヴィサン『エヴリデイ』はまさにそんな発想のもと組み立てられた人格転移小説だ。人の意識から意識へと乗り移って、日々別の人間として生きるという発想は昔からあるし、物語のネタとしてはそう珍しいものではない。最近でも『君の名は。』は(変わりっぱなしだけど)そうだし、触れることで他人の意識を乗っ取ることができる人々を描くクレア・ノース『接触』もそうだ。 でも、作にいちばん近いのは新海誠もその名を上げていたグレッグ・イーガンの短篇「貸金庫」だろう。どちらも、朝目覚めると昨日

    毎朝目が覚めると別の人間になっている──『エヴリデイ』 -基本読書
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