衆参両院で3分の2を超える自民、公明、維新など「改憲勢力」の数の力で、安倍首相が提案した憲法9条改正を発議させる――。そうした構図が見えてきた。 首相は先週末、自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長に対し、衆参の憲法審査会に提案する案のとりまとめを急ぐよう指示した。それに先立つ同本部の幹部会では首相補佐官が、自公維による国会発議が首相官邸の意向だと発言したという。 一連の首相の指示は二つの意味で筋が通らない。 ひとつは、憲法改正を発議する権限は国会にあるということだ。行政府の長である首相が自らの案を期限を切って示し、強引に動かそうとするなら、「1強」の暴走と言うしかない。 二つ目は、衆参の憲法審査会で現場の議員たちが培ってきた議論の基盤を崩すことだ。 憲法改正原案を審査する役割を持つ憲法審は、2000年に設置された旧憲法調査会以来、小政党にも平等に発言機会を認めるなど、与野党協調を重んじる