「私、傘二本持ってるから、よかったら使ってください。骨が少し曲がってて、もう捨てちゃうつもりだったけど、まだ生きてるし、けっこう笑顔が可愛い傘だから、もしよかったら持って帰ってください。捨てちゃうつもりだった私は、もうたぶん嫌われたから。」 土曜日の夕暮れ、近所のスーパーマーケットを出ると、外は酷い雷雨だった。 何とか家まで走って帰ろうと思って試してはみたのだが、風も雨もあまりにも強くて、すぐに心が少し折れ曲がり、目に付いた小さなアパートの駐輪場に駆け込んだ。もう体はずぶ濡れだったから、このまま濡れて帰っても変わりはないのだが、ぼくはリュックに一眼レフのカメラを入れていたので、それが気になったし、立ち向かうには激し過ぎる雨だと、打たれてみてそう感じた。 すぐにはおさまりそうにない煙の渦みたいな嵐の空を見上げていると、アパートの一室のドアが開いてグレーの雨合羽を着た女性が出てきた。 彼女はお