ダンスと演劇が共演する「タンツテアター」(ダンス演劇)による話題作を次々に発表し、20世紀のダンス・演劇界を変えたと言われている振付家、ピナ・バウシュ。その代表作のひとつである『カーネーション--NELKEN』が、1989年以来、28年ぶりに日本で上演される。 舞台一面を埋め尽くした無数のカーネーション畑。そこに現れる一人の男性ダンサーが、ジョージ・ガーシュウィンの「The Man I Love(私の愛する人)」を手話で語る。あるいは正装した男女のダンサーが春夏秋冬の仕草で踊りながら、一列で歩む ── これらは『カーネーション』に登場する一場面だ。 ピナ・バウシュは1970年代より、質問をダンサーに投げかけ、その答えを選んでコラージュしていく創作手法を始める。ダンサーたちは、言葉や動き、歌などでその問いに対する答えを表現しながら、自分自身と向き合うことを余儀なくされた。本作は、多種多様な