まず明らかにしたいのは、一連の文章には特定の個人や集団・団体を攻撃する意図がないということ、そして、ナルシシズムは必ずしも否定的な内容だけを含むものではないということである。ナルシシズムの満足を得るために、人は困難な使命や運命を担い、厳しい鍛錬に耐えることができる。例えば三島由紀夫は、日本的なナルシシズムを体現している人物の一人である。しかしそういった言説を用いることは、三島由紀夫の人物や文学作品を貶めるものではなく、かえって三島由紀夫によって日本的なナルシシズムという概念が持つ内容が豊かにされている。