2008年から2010年くらいに、トロピカル代数や一元体F1の話をよくしていました。今でもウッスラと興味は続いています。ずっと疑問に感じているのは、「一元体では、なぜ足し算がないのだろうか?」ということです。 「定義より足し算を持たない」と言ってしまえばそれでオシマイですが、なにかの根拠が欲しいのです。理論的な根拠じゃなくてもいいです、心情的な納得感があればそれでいいんです。 2010年当時に僕が考えた「納得のための理屈」は、「もともとはあった足し算が極限操作で死滅してしまった」というものです。しかし、完全に死滅したわけじゃなくて、一部の足し算が生き残っているように思えるのです。生き残ったヤツラが役立たずなので、足し算がないように見える、ということです。 この事情を、「いわゆる「一元体」の正体をちゃんと考えてみる」の「足し算はまったくないのだろうか」という節で次のように書いています。 [一
前置きみたいことばかり書いてないで、そろそろF1の実質的な話をしようか、とも思うわけですが、もう1回僕の動機や気分について述べます。 いわゆる一元体F1には、なにかと好奇心を刺激されるのですが、それだけでは「ハマる」まではいかないと思うんですよ。ある程度は「役に立つ」という見通しもないとね。打算というか、「あわよくば」という下心ですね*1。 内容: シャイ・ハラン ハランとステファネスクの接点は? そして、アブラムスキー/クック シャイ・ハラン 「僕がエフイチにハマる理由」でも書いたように、「F1の計算て、デジャブな感じ、何かと思い当たるふしがある」ことが僕が下心をいだいてしまう背景です。「デジャブな感じ、何かと思い当たるふし」が何に由来するのかハッキリとはつかめなかったのですが、シャイ・ハラン(Shai Haran, 恐ろしくヤル気のないホームページ)の「足し算なし幾何」の冒頭を読んで少
ここんとこF1の話ばっかりしてますな。 「いわゆる「一元体」の正体をちゃんと考えてみる」において、「F1」という記法も、「一元体」「標数1の体」という言葉もあまりにも不適切でヒド過ぎるとブーたれたけど、いまさらどうにもならないので、F1を使います。太字・下付きが面倒ならF1、呼び方はエフワンだとカーレースみたいだからエフイチ。 F1の計算て、デジャブな感じ、何かと思い当たるふしがあるのです。そこが面白い。コンヌみたいな超天才の大数学者が、喩え話とかではなくて、モロに 1 + 1 を真剣に探求しているってことも、世間話としては楽しいしね。 F1単独じゃなくて、F2、B、F1の3つ組で考えるとより興味深いと思います。どれも台集合は {0, 1} で、足し算が違います。もし1ビットの計算機があったら、機械語命令Addは、繰り上がりを捨てて 1 + 1 = 0 とするのが自然だと思います; これは
コンヌやその他の人々が探求している謎の代数系F1ですが、記号「F1」は既に定着しており、「一元体」とか「標数1の体」という言葉もよく使われています。しかし、これらの記法/用語法は大変に良くないものです。人を混乱させたりウンザリさせたりと、弊害があると思います。 実は僕自身、以前(いつかは忘れた)F1についてなんかで見た覚えがあるのです。しかし、「F1 = {1}」という記述で、「バカバカしい/ウサン臭い」と感じて何ら興味を持てませんでした。コンヌ/コンサ二の論文で、バカバカしくもないし、ウサン臭くもないことがやっと分かった次第。 この記事内では、説明の都合上、F1に代えてTという記号を使います。「F1」という記号や「一元体」「標数1の体」という言葉がなぜ不適切かというと: Tは、集合として一元(シングルトン)ではない。0と1の二元である。 Tの標数が1であると言い切るのは難しい。むしろ、T
数学において一元体(いちげんたい、英: field with one element)あるいは標数 1 の体 (field of characteristic one) とは、「ただひとつの元からなる有限体」と呼んでもおかしくない程に有限体と類似の性質を持つ数学的対象を示唆する仮想的な呼称である。しばしば、一元体を F1 あるいは Fun[note 1] で表す。通常の抽象代数学的な意味での「ただひとつの元からなる体」は存在せず、「一元体」の呼称や「F1」といった表示はあくまで示唆的なものでしかないということには留意すべきである。その代わり、F1 の概念は、抽象代数学を形作る旧来の材料である「集合と作用」が、もっとほかのより柔軟な数学的対象で置き換わるべきといった方法論を提供するものと考えられている。そういった新しい枠組みにおける理論で一元体を実現しているようなものは未だ存在していないが、
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