私はどちらかといえばやや古風な性格だ。毎日配達される新聞の肌触りや感覚が好きで,本も手に持って読むほうがいい。しかし世界は急速に変化している。それを促進しているのが,私が働いているIT業界である。魅力的なディスプレイや端末が矢継ぎ早に発表され,本や絵画などのデジタル化,いわゆる電子図書館プロジェクトを推し進めている。 ただ電子図書館を巡っては様々な課題がある。公的機関と私企業のどちらが進めるのがよいのか。著作権の扱いを尊重すべきなのか,それともアプローチを変えるべきなのかなどだ。 EU主導で電子図書館が始動 電子図書館プロジェクトは,公的機関と私企業それぞれが推進している。公的機関が進めるプロジェクトの代表例が,EU(欧州連合)が主導して2008年に公開した電子図書館ポータル「Europeana」だ。欧州の図書館や博物館,美術館などが持つ,歴史的な書籍,地図,絵画,映画,新聞などをデジタル