ゲーデル入門のつもりで読んだが、「数」の恐ろしさを思い知ると同時に、確かだと思い込んでたリアルがゆらぐ。急に足元が消えたような感覚にとらわれる。そのへんのミステリよりも背すじが寒くなる。 8章まで面白く読める。聞き手の「おっさん」が程よく分かっていないので、絶妙の質問をしてくる。まるでわたしの代わりのようだ。おかげで、「わからない」から「わかる」快感をたっぷり味わう。 興味深いのは、「わかった」とするときの居心地悪さ。アタマでは分かっても、腹に落ちない「だまされているような感覚」がつきまとう。例えば、 「1= 0.999…」について、ありがちな説明として、 1 = 1 両辺を3で割る。左辺は分数、右辺は小数で表現すると、 1/3 = 0.333… 両辺に3をかけると、 1 = 0.999… 聞き手の「おっさん」は、これがうさんくさい、という。 つまり、0.99999999999999999