近年の線状降水帯による豪雨災害や気候変動の進行に伴う洪水被害の激甚化等を見据えて、国や地方自治体は水害リスクマップ等の整備を進めている。企業でも、BCP対策や財務関連情報開示への対応として、自社だけでなくサプライチェーンを含めた浸水リスクの評価が求められている。 水害リスクマップは地域や企業の多様な用途を想定した新たな水害リスク情報だが、洪水浸水想定区域図と同じく、多数のシミュレーション結果の最大値を用いた安全側のリスク情報となっている。少々乱暴な例えだが、40.8℃という日本有数の最高気温を記録した山形市の気候リスクを、シミュレーションで予測された気温の最大値だけで分析すると、この地での暖房機器の必要性はみえてこない。浸水リスクの場合も、最大値以外の予測結果を含めた分析によって、現行の水害リスク情報を補完できる新たな情報が得られる可能性がある。 本稿では、地方自治体での対策立案や企業の情