本を読んで、ホラを吹く。 第一回は壺のお話。「つぼつぼ」 いやな壺に入ると超気持ちいい。 そのことを、バクちゃんの壺で知った。 「なに、きみ、壺もってないの」 衣のはげた串カツをタレにくぐらせながら、バクちゃんはおどろいた顔をする。壺を持ってないわたしよりも食べかけの串カツをタレに二度漬けするバクちゃんのほうがどうかしている、と内心おもったけれど、いまさらなにをいってもどうにもならないひとだし、 花瓶なら玄関にかざってあるよ、 とだけ応える。 「花瓶は壺じゃなくて、あれ、壺なのかな? ていうかそういうんじゃなくて」どうもバクちゃんは全体的に生き急いでいるっぽくて、口のなかをもごもごさせつつ泰然と会話をつづける。「いやな壺とか、おちつく壺とか、おかあさんの壺とか、そういう壺」 壺にいやとかおかあさんとか、ある? 「うぶぶぶぶぶぶ」と、バクちゃんは咀嚼で濁った笑いを発し、珍奇なものでも発見した