化石史料から我々が知り得る、人類の「文化」の始まりについての知見というものは、存外に少ない。化石には残りにくいもの、というのがあまりにも多いからだ。例えば、我々は、我々の祖先がいつ、言葉を話し始めたのかいまだに知らない。 Like Us on Facebook しかし、遺伝学の進歩は、ゲノムに残された情報を元に人の歴史を辿ることを可能にし始めている。その一つの成果がこれだ。ヒトが衣服をまとい始めたのは、7万数千年前のことである、という。 きっかけはささいなことであった。ドイツに住むあるアメリカ人遺伝学者の息子が、学校から一枚の紙を持ち帰った。「最近、シラミが発生しているので注意してください。なお、シラミは寒さに弱いので人体を離れると24時間以上生きることはできません」。 遺伝学者、マーク・ストーキングはこれを読んではたと気付いた。シラミが人の体から離れて生きることができないのならば、