タグ

ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (17)

  • 書評 「広がる! 進化心理学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    広がる! 進化心理学 朝倉書店Amazon 進化心理学は基的にヒトの行動や心理を進化的な視点から理解しようとする試みであり,極めて学際的な営みになる.書はそのような進化心理学の周辺分野の専門家たち(その多くは同時に進化心理学者でもある)による進化心理学が周辺分野に与えてきた影響,あるいはその親和性を解説する一冊になる.編者は小田亮と大坪庸介. 冒頭の「まえがき」は「なぜ書店の『心理学』の棚には『進化心理学』というコーナーがないのか」という面白い掴みから始まっている.基的に新しい分野でまだ認知度がなく,そういう書名のが少ないからだと思われるが,ここでは,進化心理学は他の○○心理学と異なり,○○にあたる内容を研究するのではなく,進化はその視座を表しているからだと説明されている.つまり進化心理学は認知科学,社会心理学,発達心理学のような内容による区分に横串を通すような分野であり,そのよう

    書評 「広がる! 進化心理学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2023/06/19
    鮫島先生も書いてるのか
  • 書評 「NOISE」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか? 作者:ダニエル カーネマン,オリヴィエ シボニー,キャス R サンスティーン早川書房AmazonNOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか? 作者:ダニエル カーネマン,オリヴィエ シボニー,キャス R サンスティーン早川書房Amazon 書はトヴェルスキーと行動経済学の基礎を作ったカーネマンが,ビジネスコンサルタント出身のオリヴィエ・シボニーと法学者で行動経済学関連の著作も多いキャス・サンスティーンと共著したヒトの意思決定のばらつきについてのになる.カーネマンとトヴェルスキーはヒトの意思決定や行動に様々なバイアスがあることを示してきたことで有名だが,書では偏り(バイアス)ではなくそのばらつき(ノイズ)が取り上げられることになる.原題は「Noise: A Flaw in Human Judgment」 序章 序章では偏り(バイアス)とばらつき

    書評 「NOISE」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  • 書評 「不平等の進化的起源」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    不平等の進化的起源: 性差と差別の進化ゲーム 作者:ケイリン・オコナー大月書店Amazon 書は,科学哲学者でありかつ進化ゲーム理論家であるケイリン・オコナーによる進化ゲームの均衡解として(差別的偏見がなかったとしても)社会的カテゴリー間の不平等をもたらす慣習や規範が創発しうることを丁寧に論じたである.社会的カテゴリーとしては特にジェンダーが大きく取り上げられているが,人種や宗教などにも当てはまる議論になっている.原題は「The Origins of Unfairness: Social Categories and Cultural Evolution」. 序章で各章の概略と文化進化の簡単な解説(文化進化の存在は書において進化ゲームを用いる基礎的な前提になる)をおいた後に論に入る. 第1部 社会的強調による不平等の進化 第1章 ジェンダー,協調問題,協調ゲーム 最初のジェンダーと

    書評 「不平等の進化的起源」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2022/01/04
  • 書評 「文化進化の数理」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    文化進化の数理 作者:田村 光平発売日: 2020/04/09メディア: 単行(ソフトカバー) 書は文化進化の第一線の研究者田村公平による文化進化リサーチの手法,およびそれを用いたリサーチ例の解説書になる.文化進化についての概説書にはメスーディの「文化進化論」やヘンリックの「文化がヒトを進化させた」があるが,書は数理的モデル構築手法に焦点を当てているところが特徴になる. 第1章 文化進化とは何か 最初の導入では文化進化研究をめぐる様々な基礎が整理されている. 文化進化研究の様々な数理的手法は進化生物学の手法の応用によるものが多い.それは情報の複製という観点から共通性があるからだ. 書の学問的スタンスは「文化の研究は人間理解にとり重要だが,それは難しい」,「そのために理解にちょうど良いレベルの抽象化を行う」というものになる. 文化には様々な定義がある.書では文化形質を「連続的あるい

    書評 「文化進化の数理」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2021/01/19
  • 書評 「人が自分を騙す理由」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学 作者:ロビン・ハンソン,ケヴィン・シムラー原書房Amazon 書は「ヒトは行動の動機について意識的に気づいていないことがある」ことをテーマにしたになる.著者はこのテーマについて深く興味を抱いた2人で,1人はコンピュータ科学と科学哲学を学んだ後にベンチャー企業でエンジニアをしていたケヴィン・シムラー,もう1人は社会科学者かつ経済学者(修士は物理学と科学哲学)であるロビン・ハンソンであり,いかにも知的好奇心と才能にあふれた2人組だ.邦題の副題は「自己欺瞞の進化心理学」となっているが,著者たちが職の進化心理学者であるわけではない.しかし関連文献をしっかり読み込んだ上で書かれていて内容は深い. 原題は「The Elephant in the Brain: Hidden Motives in Everyday Life」.「部屋の中のゾウ」というのは

    書評 「人が自分を騙す理由」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2020/02/12
  • 書評 「犬から見た人類史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    犬からみた人類史 作者: 大石高典,近藤祉秋,池田光穂出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2019/05/25メディア: 単行この商品を含むブログを見る 書は犬という視点から人類史を見るというテーマで様々な分野の研究者から寄せられた論考を集めたアンソロジーだ.3部構成で第1部は「犬革命」と称して犬の誕生から先史時代まで,第2部は「犬と人との社会史」で前近代から近代まで,第3部は「犬と人の未来学」で現代から未来までを扱う.犬から見たという視点が面白いし,普段読まないような分野の文章も読むことができていろいろ楽しいだ. 第1部 犬革命 イヌの特徴である吠えるという行動がどうして進化したのか,狩猟採集民の遊動型狩猟におけるイヌの役割,縄文人のイヌの使い方,イヌの性格と遺伝子,イヌとヒトの視線のやりとり,犬の比較神話学という論考が並ぶ. 最初の「イヌはなぜ吠えるか」(第1章)という論考は面

    書評 「犬から見た人類史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2019/08/22
  • 書評 「心の進化を解明する」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    心の進化を解明する――バクテリアからバッハへ 作者: ダニエル・C・デネット出版社/メーカー: 青土社発売日: 2018/06/23メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る ダニエル・デネットは進化生物学,認知科学に関する科学哲学者であり,これまで「解明される意識」ではデカルトの心身二元論などの「意識をほかの生理的現象とは異なる特別なものとして説明しようとする立場」を徹底的に否定し,「ダーウィンの危険な思想」でダーウィニズムを鮮やかに解説し,自然淘汰が心や意識を作ったのだという主張を行っている.このような考え方は「自由は進化する」「スウィート・ドリームズ」「思考の技法」などの著作でも展開されている.書はこのような考察の集大成のような書物であり,いかに意識や理由を求める心がヒトに現れることになったのかについての考察が展開されているものだ.原題は「From Bacteria to

    書評 「心の進化を解明する」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2018/11/06
  • 2018-09-23

    医療現場の行動経済学―すれ違う医者と患者 作者: 大竹文雄,平井啓出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2018/07/27メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る 書は行動経済学の知見を応用して医療現場をより良いものにしたいという思いで書かれただ.編者は大竹文雄と平井啓で,行動経済学者や医師などこの問題に取り組んでいる17人の分担執筆になっている.日では長らく医師がよかれと思う治療を(医学的知識がないと想定される)患者に施すパターナリズム型の医療が主流だったが,ここ20年ぐらいで,医師が患者に医療情報を提供して医師と患者の合意による治療にかかる意思決定を行うインフォームドコンセント方式に切り替わっている.そしてこのインフォームドコンセント方式は患者が確率を含む情報を理解して合理的に意思決定ができることが暗黙の前提になる.これはまさしく経済学は人間をホモ

    2018-09-23
  •  大英自然史博物館展 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    大英自然史博物館にはロンドンに行ったときに何度かサウスケンジントンまで足を伸ばして訪問したことがあるが,その美しい建物,ダーウィンとオーウェンとの直接的な縁,恐竜だけでなく魚竜のコレクションのすばらしさ,鉱物コレクションの途方もなさがいつも印象的だった. しばらくロンドンと縁がなく10年以上ご無沙汰になっていたが,今回は始祖鳥のタイプ標化石を始め貴重なコレクションの一部が上野の科博で公開されるということで見に行ってきた. 2008年のダーウィン展の時には写真撮影不可だったが,最近の科博の特別展は結構写真撮影可になっていて嬉しい限りだ.今回もフラッシュを焚かなければ撮影可ということだった.こうなると高感度撮像素子のあるいいカメラが欲しくなってくるところだ.今回はごく普通のスマホ撮影. 序章 自然界の至宝 博物館への招待 最初のコーナーは,まず美しい標をいくつか見てもらおうというイントロダ

     大英自然史博物館展 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2017/04/28
  •  「ルービンシュタイン ゲーム理論の力」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ルービンシュタイン ゲーム理論の力 作者: アリエル・ルービンシュタイン出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2016/08/19メディア: Kindle版この商品を含むブログ (2件) を見る 書は経済学者でゲーム理論家であるアリエル・ルービンシュタインによるゲーム理論をテーマにしただ.理論の解説書でも単なるエッセイでもなく,ゲーム理論と社会の現実の問題の関係についての深い洞察を様々なお話を通じて緩やかに語る不思議なになっている.原題は「Economic Fables」となっており,ゲーム理論の質は一つの「寓話」であるととらえるべきだと著者の思いが込められている.*1 序章 冒頭は著者が会計士だった父親へ尊敬の念を抱いていたことを語り,しかしイスラエルで所属する大学が会計学の講座をもうけようとしたときには一人で抵抗したという思い出話から始まっている(著者は親の代に東欧からイ

     「ルービンシュタイン ゲーム理論の力」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2017/02/22
    面白そう
  •  「交尾行動の新しい理解」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    交尾行動の新しい理解-理論と実証 作者: 粕谷英一,工藤慎一出版社/メーカー: 海游舎発売日: 2016/03/15メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る 書名は「交尾行動」となっているが*1,実際には性役割,近親交配回避,性淘汰理論のここ20年の進展を解説し,さらにグッピーとマメゾウムシについての性淘汰の実証リサーチの詳細が紹介されているになる. 性役割や性淘汰に関する進化理論は70年代から90年代にかけて大きく進展し,日でも行動生態学の教科書がいくつも刊行されてその理論的な詳細が紹介されてきた.理論はその後も性的コンフリクト,精子競争と隠れたメスの選択,拮抗的性淘汰をめぐって前進しているが,ここ20年ぐらいは日語書籍としてはあまり紹介されておらず,包括的な解説としてはわずかにデイビス,クレブス,ウエストの教科書に簡単な解説があるのみという状況だ.書はこの分野に

     「交尾行動の新しい理解」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2016/04/07
    グッピーだ
  • トリヴァースによる進化生物学者たちの想い出 追加情報  - shorebird 進化心理学中心の書評など

    先日トリヴァースが著名な進化生物学者たちの想い出をネットで公開しているのを紹介した.http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20150517 (この原文は「Vignettes of Famous Evolutionary Biologists, Large and Small」と題されている.http://www.unz.com/article/vignettes-of-famous-evolutionary-biologists-large-and-small/) そして今月トリヴァースの自伝「Wild Life: Adventures of an Evolutionary Biologist」が刊行され,早速電子書籍版をダウンロードしたのだが*1,目次を見ると何と第13章がそのまま「Vignettes of Famous Evolutionary Biologi

    トリヴァースによる進化生物学者たちの想い出 追加情報  - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  「視覚の認知生態学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    視覚の認知生態学―生物たちが見る世界 (種生物学研究) 作者: 種生物学会,牧野崇司,安元暁子出版社/メーカー: 文一総合出版発売日: 2014/11/27メディア: 単行この商品を含むブログ (3件) を見る 種生物学会は学会のシンポジウムのを文一総合出版からシリーズものとして出版しており,書もその一冊.内容的には2009年のシンポジウム「生きものの眼をとおして覗く世界:生理学が支える認知生態学の可能性」が元になっている. 第1章は視覚の基礎知識.光が電磁波であり,視覚とは地上に届く太陽からの電磁波スペクトルの中の一部分を感知しているものであること,電磁波を神経パルスに変えるのはロドプシンであり,それはオプシンとレチナールからなり,オプシンの種類により波長の感受性が異なること,ヒトには青,緑,赤に感受性の高い3種類のオプシンがあり,ヒトの色覚はその感受性の違いを「青ー黄(緑+赤)」

     「視覚の認知生態学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2015/01/14
  •  「協力と罰の生物学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    協力と罰の生物学 (岩波科学ライブラリー) 作者: 大槻久出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2014/05/23メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (12件) を見る 書は岩波科学ライブラリーシリーズの一冊で,利他行動を含む協力行動の進化にかかる解説書である.著者は若手数理生物学者の大槻久. 最初に自然界には協力行動があふれていることを豊富な実例を元に解説している.しかしその前に協力を定義する際の通貨が適応度であることをしっかり断っていて渋さが感じられる.協力の実例には,バクテリアが流されてしまわないためのぬめり(バイオフィルム),粘菌の柄になる細胞,アリのワーカー,オナガのヘルパー,血を吐き戻すチスイコウモリ,群れを作る動物のアラームコール,フードコール,菌根菌その他の他種生物間の相利共生などが紹介されている.まずは背後の原理にあまりこだわらずにひたすら並べて読

     「協力と罰の生物学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2014/06/25
  •  「進化の弟子」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化の弟子: ヒトは学んで人になった (ジャン・ニコ講義セレクション) 作者: キムステレルニー,Kim Sterelny,田中泉吏,中尾央,源河亨,菅原裕輝出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2013/12/26メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る 書は生物学の哲学の大家の1人キム・ステレルニーによる人類進化を扱った一冊である.原題は「The Evolved Apprentice」.書の主題はヒトの認知能力にある特異性についての説明だが,ステレルニーは書は「生物学の哲学」のではなく,「自然の哲学」のだとしている.哲学的手法を用いて,ヒトの特異性を説明する試みだという趣旨だが,読んだ印象としては,様々な進化生物学者の仮説に対して突っ込みを入れ,かついくつかの独自の仮説を提示したような内容になっている. 序章ではステレルニーの考え方の特徴がまとめられている.基

     「進化の弟子」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2014/02/27
  •  「ファスト&スロー」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか? 作者: ダニエル・カーネマン,友野典男(解説),村井章子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/11/22メディア: 単行購入: 8人 クリック: 204回この商品を含むブログ (46件) を見るファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか? 作者: ダニエル・カーネマン,友野典男(解説),村井章子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/11/22メディア: 単行購入: 6人 クリック: 8回この商品を含むブログ (28件) を見る 書はヒトの心の二重過程(そしてそのために生じる様々な認知的なバイアス)や効用評価にかかるプロスペクト理論で有名なダニエル・カーネマンによる一般向けの啓蒙書である.心の二重過程にかかるバイアスは発表以来すでに40年近く,プロスペクト理論も30年近く経過している.

     「ファスト&スロー」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    Lian
    Lian 2013/04/04
  •  「こころと言葉」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    こころと言葉―進化と認知科学のアプローチ 作者: 長谷川寿一,伊藤たかね,クリスティーンラマール,Christine Lamarre出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2008/11/01メディア: 単行購入: 5人 クリック: 22回この商品を含むブログ (3件) を見る これは東京大学21世紀COEプログラム「心とことば−進化認知科学的展開」の成果の1つを1冊にまとめたもの.(心と言葉のひらがな漢字表記が書の表題で逆転している理由は定かではない)多くの研究者のエッセイをまとめた3部構成になっていて,第1部は進化生物学的に見た言語,言語の起源・進化が扱われている.第2部は言語学からのリサーチ,第3部は認知科学からのリサーチという構成だ. 第1部「進化からことばを見る」 幅広い読者のためか,まず生物進化全体を解説するエッセイが冒頭におかれている. 斎藤成也による「言語能力獲得に

     「こころと言葉」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  • 1