形而上学に対立する学の名は形而下学である。形而下学とは、経験的に規定され ることの可能な生成変化する対象についての学という意味である。したがって形而 上学とは、経験的には規定されえず、思惟によってのみ捉えることの可能な、生成 変化しないものについての学という意味である。 しかし、こう述べただけでは、まだ、形而上学の意味はよくわからない。形而上 学という学問はアリストテレス(384-322BC)に由来(形而上学という名称は、BC1 世紀頃アンドロニコスがアリストテレスのある種の論文群を、編纂上、自然学的諸 論文の後に置いたことに基づく)するので、では、形而上学とはいかなる学問か、 アリストテレスに基づいて述べてみたい。というのは、後の偉大な哲学者たちにお いて、形而上学に対する解釈はさまざまあるにせよ、常にアリストテレスとの異同 如何ということが基準となるからである。 アリストテレス以前