JINSEI STORIES 滞仏日記「どんどん進んでいく高校生ブランドを見守る父ちゃん」 Posted on 2020/02/21 辻 仁成 作家 パリ 某月某日、今日は息子から家を一日貸してほしいと頼まれてしまった。なんで、と訊いたら、高校生ブランドの企画会議をやるのだという。軽い気持ちで「いいよ。家に上がる時には靴を脱いでスリッパ履いてもらってね」とだけ言っておいた。フランスの家は基本靴を脱がない。不衛生なので、うちは必ず脱いでもらうことにしている。昼過ぎ、続々と若者たちがやって来て、大変なことになった。心配なので、水とか持っていくふりをして部屋を覗くと、若者たちが車座になって息子を囲み議論している。女の子もいる。司会進行は息子君だ。普段はとってもシャイで大人しい子なのだけど、力強く一人で喋り続けている。ちょっとこっそり話しを聞いてみた。 「この会社はTシャツ代が4ユーロで、プリント
JINSEI STORIES 滞仏日記、2「息子がのめり込む高校生ブランドの可能性」 Posted on 2020/02/20 辻 仁成 作家 パリ 息子が中心となって同級生らを巻き込みスタートさせたブランド企画が日々、どんどんと具体化していて驚かされた。今日はいきなり試作品を見せられてしまった。仕事をしていると息子がやって来て、トレーナーを手渡された。背中の首のところに彼らのブランドのロゴマークが入っている。前面には大きなデザイン画と英語の文章が載っていた。 「パパの意見を聞きたい、どう思う?」 まずは軽く褒めた。つまり短時間で具体化しているその行動力は素晴らしい、と。次にデザインを批判した。悪くないし、それなりに今風なのだけど、でも、ハッと驚かされる斬新さがない、と。これはきちんと話をした方がいいと思い、知り合いのフランス人がはじめた中華レストランに食事に誘ったのだ。そこでぼくらは春雨
JINSEI STORIES 滞仏日記「なぜぼくは料理にこだわるのか」 Posted on 2020/02/19 辻 仁成 作家 パリ 某月某日、ぼくは食べることよりも料理をすることの方が好きだ。なぜ自分が料理をするのか、料理がどうしてこんなに好きなのか、についてあまり考えたことがなかった。ちなみに、今日はサラダ蕎麦と太巻きを作った。息子との味気ない二人暮らしの日々がもう何年も続いているが、起きて寝て起きて寝ての日々の中で必ず息子と顔を合わせるのが食事時なのである。心を貧しくさせないためにも食べることが豊かだと幸せになる。 もしも、ぼくが料理をしない人間だと仮定しよう。そうなると親子の食事時間はなんとも殺伐なものになっていたことだろう。ぼくはもともと料理が好きだったけれど、シングルファザーになって以降はとくに食事に一番時間と情熱をつぎ込むことになった。必死で美味しいものを作り続けてきた。な
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