ジョン・ヴァーリイは1970年代半ばにアメリカSF界に華々しく登場し、あまりタイムラグなく日本へも紹介された。とにかく新鮮だった。衝撃的なSFではすでにバラード、エリスン、ディレイニー、ティプトリーなどがいたが、ヴァーリイはそうした先鋭的なタイプと異なる「居心地の良さ」があった。それは自閉的なファンタジイなどではなく、世界へ向かって窓を穿つ感覚をともなっている。 『汝、コンピューターの夢』に収められた七篇は、いずれも初期作品(74〜76年の発表)であり、人間が太陽系諸天体へ移住したのちの《八世界》を舞台にしている。《八世界》とは水星、金星、月、火星、土星の衛星タイタン、天王星の衛星オベロン、海王星の衛星トリトン、冥王星だ。人類の宇宙進出後の未来史を扱ったSFは枚挙に暇がないが、《八世界》が先行作品と一線を画すのは「人類は地球から追いだされた」点だ。超越的な侵略者が地球を占拠し、暮らしていた