最近、講演や対談においでくださったかた、あるいは学生のみなさんからたいへん頻繁に聞かれることがありますので、ここでお答えをしておきます。 『切りとれ、あの祈る手を』(河出書房新社)は、文庫化はいたしません。 この本の装幀は、無論その卓越したところはデザイナーのかたの伎倆に帰すべきでありますが、何度もそのデザイナーのかたと打ち合わせをした末できあがったものです。つまり、装幀について私が関与した最初のものであり、そのテイストを失いたくありません。他の様々なことを鑑みても、この本は、この単行本という形がもっともふさわしいと考えます。ゆえに、この本は文庫化はいたしません。これは、河出書房新社にも了解済み事項です。以上、ご報告まで。