「ミラン・クンデラと小説」 赤塚若樹 水声社 2000 2001/03/25 (前ページからのつづき) 第1章 キッチュとは何か そういえば当たり前のようにミラン・クンデラと言っているが、ここで簡単に彼について書いておくと、クンデラは1929年チェコ生まれで、今は亡命先のフランスで活動している作家である。代表作はいくつかあるが、『存在の耐えられない軽さ』の作者だと言ったらへぇと思う人もいるだろう(てか、私がそうだった)。 さて、のっけからキッチュキッチュとやや興奮気味の私だが、クンデラがどうしてキッチュを問題としているのかを一言で言うなら、彼はそれを「小説の敵」と捉えているからである。この小説の敵には他に2つあり、1つは「アジェラスト(笑わない者、ユーモアのセンスのない者)」、もう1つは「紋切り型の考えの非-思考」だと言う。加えてこの3つは、同じ根をもつ1つの敵だとも述べている