youkoseki.com 本を飼う 本を拾ったのは小学生のときだった。正確には覚えていないけれど、高学年だったと思う。下校途中、家の近所にあるアパートの入口に、段ボールに入れて捨て置かれた小さな本を見つけたのだ。一緒に歩いていた友達は気付きもしなかったけれど、私は完全に本と目があってしまった。「ちょっと待って」と友達に言って、私は本をそっと拾った。 小さくて、文字でいっぱいの本だった。表紙は古びていたけれど、中身は綺麗。後で知ったが、それはアメリカ産の童話で、有名な翻訳家に訳されて、日本でも昔よく流行ったものだった。 私は本を胸に抱えて家に帰った。家で何か飼いたいと、これまで何度も親に訴えて、いつもダメだと言われてきた。だから拾ったばかりの本も、捨てて来なさいと言われるのではないかと思っていた。そんな時に限って、母は仕事を早く終え、家でもう夕食の用意をしている。しかし、私が抱えた本を見て
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