797-812_社会保障研究_特集(市川)_SK.smd Page 1 17/03/01 10:55 v3.30 Ⅰ 福祉国家おける中央−地方関係 はじめに,福祉国家における中央−地方関係に ついて,簡単に確認しておきたい。 行財政の研究者にとってはひろく知られた認識 であるが,福祉国家の進展は,中央−地方関係を 大きく変容させてきた。福祉国家の成立時期につ いてはいくつかの有力な説が存在しているが,そ の中で最も一般的なものは,英米独などの先進諸 国において,両大戦間のいわゆる戦間期に成立し たというものであろう。そして,福祉国家の成立 と発展は,中央−地方関係を集権化させてきたの である。 この福祉国家の進展にともなう中央集権化は, 近代主権国家形成期の中央集権化――近代主権国 家による封建割拠の克服と地方の土地と人民に対 する支配権の貫徹――と対比する意味で,一般 に,新中央集権とい