9月1日、すなわち立春から数えて二百十日。宮沢賢治の『風の又三郎』を読んだことのある読者なら、この日、謎の小学生・高田三郎が“風”のように転校してくる冒頭の場面をご記憶かもしれない。古来より台風が襲来するとされるその二百十日、名古屋には別の“台風”が到来した。「どっどど どどうど どどうど どどう / 甘いざくろも吹き飛ばせ / すっぱいカリンも吹き飛ばせ」という『風の又三郎』の一節を、初音ミクと合唱団がぞくぞくするような半音階の旋律(戦慄?)に乗せて歌う、「イーハトーヴ交響曲」という“台風”だ。 舞台上にずらりと並んだオーケストラ、混声合唱、児童合唱は、マーラーの声楽付き交響曲を思わせる大編成だ。そして実際、「イーハトーヴ交響曲」は冨田勲がマーラー的な“音宇宙”の中で賢治の作品世界を表現しようと、10年以上をかけて構想・完成させた大作である。かつてマーラーは、自作の中に民謡詩集『少年の不
![特集:待望の再演ツアーがスタート!冨田勲「イーハトーヴ交響曲」解題 - CDJournal CDJ PUSH](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a123128b07cc08507c72200f382b5c353d692af2/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.cdjournal.com%2Fimage%2Fjacket%2Flarge%2F411211%2F4112111024.jpg)