(1)“常識”破りの光景 昨年十一月、平日の午後十時半。高知赤十字病院(高知市新本町二丁目)の救急外来に居た私は信じられない光景を見た。 救急外来にある医師の在席表示板で、四人いる脳神経外科医のうち三人のランプが消えていたのだ。 脳外科で唯一残っていたのは、この日が外科当直の泉谷智彦医師(45)だけ。こんなに早く脳外科が帰るなんて…。それまで一カ月半見てきた高知医療センター(高知市池)の常識は何だったのか。 私は医療センター脳外科の溝渕雅之医師(48)に連絡した。「すごい。ドクターが家に帰ってますよ」 すると彼は言った。「普通はそうなんですよ。こちらはまだ、皆、いるんですけど」 【写真】高知赤十字病院に運び込まれる深夜の急患(高知市新本町2丁目) ◇ ◇ ひとまず医療センターの取材を離れた私は、同じ救命救急センターの資格を持つ高知赤十字病院を訪ねた。脳外科医の数は医療セン